はじめに
2026年8月19日から21日にかけて、インドのベンガルール(Conrad Bengaluru)で開催された apidays India 2026 に参加してきました。参加のきっかけは、NASEBANALの今後の事業計画として、エージェントを活用したアプリ内製化支援のアプローチについて、Claudeと議論していた際に過去のブログでも触れてきたContract Driven Developmentを実現するSpecmaticというオープンソースソフトウェアの紹介があり、さらには SpecmaticのFounder & CEOであるNaresh Jainが当イベントのオーガナイズを行うことから、参加をきっかけとして、当人と挨拶する良い機会と考えたためです。
apidaysは、世界各地で開催されているグローバルなイベントシリーズであり、インドでは昨年に続いての2回目の開催となります。今年のテーマは "Powering Humans and Agents Alike" と設定されていました。
以下、当イベントの様子と、参加したセッションから得た学びをご紹介します。
apidays India 2026 とは
開催地はインド南部のカルナータカ州の州都であるバンガロール(正式名称:ベンガルール)であり、国内外の多くのIT企業や先端技術のスタートアップが集中していることから「インドのシリコンバレー」と呼ばれています。自分の中でバンガロールといえば、2005年に出版され、自分のキャリアにも大きな影響を及ぼしたトーマス・フリードマン著「フラット化する世界」であり、カレーが大好物な私としては今回の初めての訪問を以前より楽しみにしておりました。
当イベントは、Postman, IBM, Specmatic, Akamai, KongとAPIと関連の深い事業に取り組む企業がスポンサーになり、会場には1,000名以上の参加者が来場し、11カ国から88名の登壇者によるセッションが行われました。
このようなイベントに日本人が来ることは珍しかったようで、多くのインド人からも色々とフレンドリーに話しかけていただき、日本に好意的な印象を持たれていることがわかり、嬉しく感じたと同時に、セッションの登壇者は、老若男女で構成され、発表者のみならず聴講者を含め、その前向きなエネルギーには自分自身いい刺激になりました。


以下、参加したセッションの中で、印象に残っているトピックを紹介いたします。
"AI and the state of APIs in 2026" (Shrey Pasricha)
最初に、Gartner社からのAIおよびAPIの実態調査のレポートが、今日の状況及び議論を示す上で包括的なカバーがなされていたので、そちらから紹介させていただきます。
まず話に挙げられたのは、AIの利用が注目されている一方、APIに関連するビジネスもまた確実に拡大しており、Gartner社の調査によればAPIマネジメントソフトウェアのマーケットは2024年から2029年まで、毎年約10.2%の成長が予想されているようです。先日参加したKubeConの議論とも整合する内容として、AgentはProbablisticな処理を対応する中で、実際のアクションはDeterministicなAPIが担うべきであり、エージェントの手足として動くDeterministicなAPIの需要は仮にエージェントが普及しても下がるものではないとされ、私も同感です。

また、2026年におけるAPI開発で用いられるAIとしては以下ツールが利用されているとのことです。今後エージェントがどのように利用可能なAPIを認識し、呼び出せるようにするか、agent experienceの視点にたったAPIのDiscoverabilityをトピックとして、いくつかのセッションで共通的に触れられていました。APIのカタログ管理はKong社が提供するDeveloper Portalのようにすでに利用可能なツールもあることから、技術的な課題というよりも、組織におけるガバナンスコントロールにおける課題と言えるかもしれません。ただ同時に、後続でも議論の通り、Arazzo Specificationという、APIを束ねたワークフローに関するSpecの議論も始まっているので、エージェントのためのAPIのDiscoverabilityをどのように実現するかは今後の継続的な議論の一つになってくるのかもしれません。

そんな中、エージェントとのインターフェースとしては、APIをToolとして呼び出すMCPの他、Agent to Agentについても言及がありました。Agent to Agentについて、初期においてはA2A等いくつかのプロトコルが提案されていたものの、今日に於いては実質的にMCPが最もマーケットで受け入れられているプロトコルになっているとのことです。MCPがリリースされる以前から、すでにこのようなAgent to Agentのプロトコルが発表され議論されていたとは知りませんでした。

また、APIゲートウェイとAIゲートウェイを今後どのように構成していくか、という論点にも言及されていました。APIゲートウェイとして有名なKong社もAPIゲートウェイとAIゲートウェイを分離した管理とされており、Gartner社が提示するReference Architectureでも分離された形で描かれています。そしてGartner社の図ではAIゲートウェイをさらに、MCPゲートウェイ、Agentゲートウェイ、LLMゲートウェイに分類されています。Discoverabilityとしては、このMCPゲートウェイへの通信がすべてMCP Serverに行くのではなく、いくつかはRESTのようなAPIサービスに連携される、というところが今回の論点と受け取りました。

先日参加したKubeconのCast AI社からは、LLMモデルも今後、価格に応じたベストミックス(FinOps) での利用可能性が言及されており、どのLLMエンジンを用いるかを制御するLLM Gatewayも一つの論点になってくるのだとは思いますが、AIゲートウェイを考えた場合にはLLMゲートウェイにとどまらず、MCP, AgentのGatewayが議論に上がってくるという論点は自分の中でも新しい気付きとなりました。
これら議論の背景を受けて、新たなビジネスとして、MCPゲートウェイを起点としたMCPマーケットプレースが創出されつつある点に言及されました。こういったレイヤーの動きは全く検知できていなかったので、大きな学びでした。MCPのように新しいプロトコルができれば、通信の整流化のためのゲートウェイの必要性が高まり、それに伴い新たなマーケットができる、こういうダイナミックな動きをいち早く検知できるかが、ITの競争力につながっていくものと再認識させられました。

総括として、故に今後、AIとの連携を見据えたAPIの新たなスタンダード、例としてエージェントによるAPIのDiscoverability等を整備することの重要性で締めくくられました。内容に時代の流れを組む新しい議論をその背景からうまくまとめられ、日本的文書とも整合するいわゆる起承転結が感じられ、とてもきれいなプレゼンテーションという印象を持ちました。

"Restoring Trust in AI-Native Development" (Naresh Jain)
続いては、私のインド訪問のきっかけでもあるSpecmaticのFounder & CEOを務められ、apidays India 2026のオーガナイザーでもあるNaresh Jain氏からの発表です。
"Restoring Trust in AI-Native Development"というタイトルで発表されました。

ここでは主にトヨタ生産方式を引き合いに、Agentを用いたソフトウェア開発でも同様のコンセプトを適用できるのではないかと述べられ、その実現方法としてSpecmaticを用いたテストが紹介されました。
これまでのMonolithなシステムではFunctionの連携はコンパイル時に検知できていたがMicroserviceアーキテクチャーではそのままでは疎結合で整合性が検知できない。そこで、Contract Testingでその不整合を自動検知できると言ったデモでした。Contract Testの実行をトヨタ生産方式でいうところの「自働化」になぞらえて紹介されました。

また、ポカヨケの例としては、String型での項目指定では、その設定値の確認なく、素通りしてしまいますが、Enum型で選択候補を明示的に規定することで、コントラクトテストの中でエラー検知ができるようになる例を挙げられました。また、それをContract Testingによる自動実行で自働化し、CIパイプライン上でのエラー検知を行燈と対応付けて紹介されました。

最後に、コーディングエージェントを安全に活用するためのHarness Engineeringについて、martinFowler.comで公開されているBirgitta Bockeler氏の記事を参照して、紹介されました。なお、当イベントではNaresh Jain氏以外にも登壇者にはThoughtworks社の関係者が多く、Birgitta Bockeler氏もThoughtworks社のメンバーの一人のようです。
ここでのHarness Engineeringとしては大きく、エージェントの動作を制御するための仕組みとして、ガイド(feedforward)と、エージェントの挙動をチェックするSensors (feedback) にわけたアクションを提案する内容となっています。

さらに、Guides / Sensorsだけのハーネスでは不十分であるとして、自然言語をExecutable Specへ変換するExecutable Intentと、Arazzoなどの仕様で構成されるExecutable Architectureを土台に据えた、より広い構成が示されました。API開発に適用する場合には、API Specs + ExamplesをGuides、Specに基づくRuntimeを用いたテストをSensorsとし、さらにそれをContinuous Governanceとして継続的に監視することが有効な手段として提唱され、その実現のためのSpecmaticの利用可能性の言及を持って締めくくられました。

このように仕様をエージェントの振る舞いを導き検証する軸に据える発想を、Naresh Jain氏は "Spec-Driven API Development with Executable Contracts" と呼んでおり、契約(Contract)よりも仕様(Spec)そのものを起点に据える意味を込めて、エージェント時代におけるContract-Driven Developmentの発展形として位置づけているようです。
"Open API Track: Welcome and Open API in the Age of AI" (Erik Wilde)
続いて、興味を持ったセッションは、Open API Initiativeで活動されるErik Wilde氏により、オーガナイズされたOpen API Trackです。冒頭では、Open API Initiativeの活動紹介が行われました。Open API Specの前身はSmartBear社のSwaggerであり、2016年にLinux FoundationのOpen API Initiativeに寄贈され、それ以後はオープンスタンダードとして仕様に関する議論が進められているとのことです。実際、本発表のErik Wilde氏の他、後続でArazzo Specificationの紹介をされるFrank Kilcommins氏はJentic社に所属しながらOpen API Initiativeの活動に携われており、Specの議論はSlack上でオープンに行われた上で、中核メンバーによりSpecとして決定されるプロセスが取られているとのことです。


以下スライドからメンバーを確認できます。Erik Wilde氏、Frank Kilcommins氏が所属するJentic社や、SmartBear社の他、いくつかの大手企業を確認できますが、必ずしも小数の大手によりガチガチに議論が管理されている、というほどでもなさそうです。また、SIGの紹介もなされました。後述するArazzo Specificationはこの内のWorkflowグループで定義されたSpecificationとのことです。

本セッションではMCPからのAPI呼び出しにあたっての注意事項の紹介がありました。1つ目のケースはAPIをLLMやMCP Clientから直接呼び出すシナリオにおける注意事項であり、LLMやMCP ClientからAPIを呼び出すにあたっては、Open API Specのみでは十分な情報が連携されないことから、効果的なAPI呼び出しに繋がらないという点に言及されました。故に後述の一連のAPI呼び出しをWorkflowとして規定するArazzo Specificationの重要性につなげります。

2つ目のケースはMCPレイヤーにカスタムコードを埋め込むケースの注意事項です。これにより1つ目のAPIを単純にMCPに公開する課題は解消され、Agent Experienceとして改善する用に見えるかもしれませんが、そのアプローチは"MCP Washing"と呼ばれ、本来、Deterministicにアクションを対応する役割を持つAPIからロジックが分断され、サービス機能の構成管理の観点からはBad Practiceとされていました。望ましくは、実行機能を司るAPIに機能を実装し、MCPには重いロジックを含まない構成が期待されるとされました。

つまり、APIを正しく実装した上で、Agent機能を拡張するような構成を実現し、Agent Experienceを高めるための仕組み化を築き上げることが本来的な"AI Readiness"であり、Jentic社はその評価のために以下に示す6つの項目で評価するアプリを公開されていることが紹介されました。今日におけるエージェント周りの動向の一歩先を行っている感じがします。
- FC: Foundational Compliance
- DXJ: Developer Experience
- ARAX: AI-Readiness & Agent
- AU: Agent Usability
- SEC: Security
- AID: AI Discoverability

"Beyond Open API: Workflows That AI Agents Can actually Execute" (Frank Kilcommins)
Open API Trackでは、Erik Wilde氏と同じくJentic社勤務のFrank Kilcommins氏から、"Beyond Open API: Workflows That AI Agents Can actually Execute"が発表されました。

Frank Kilcommins氏はOpen API InitiativesでWorkflowの定義に相当するArazzo Specificationの共著者とされており、Arazzoの前提となるWorkflowの特徴を以下の様に紹介されました。すなわち、ここでの議論でのワークフローはAPIの連続的実行要領を定義するものであり、Declarativeな実装であり、再現性があることが特徴とされました。

Why Workflow Matterを受けての取り組みがOpen API Initiativeの中で策定が進められているArazzo Specificationへとつながってきます。
human-readableとmachine-readableの双方を実現するためのSpecと位置づけられているようです。

以下、文字が小さくて読めないかとは思いますが、要はOpen API Specと同様YAML形式での定義であり、ワークフローのチェーンを示す内容になっています。
イベントでは一環して、Developer ExperienceからAgent Experienceに議論が移りつつある旨、述べられていましたが、ではAgent Experienceを向上するには何をすればいいのか、そのアプローチがSpecとして示されていると感じました。今後、このArazzo Specificationに基づくアプリケーション、サービスが広まり、Agent Experience向上のためのビジネスが増えてくるのかもしれません。

そして、Arazzoもまだ比較的新しいSpecということで、色々と改定が進んでいるようです。初版の1.0.0は2024年5月29日にリリースされた後、2026年5月17日にv1.1.0がリリースされ、大きくはAsync APIへの対応、およびワークフローの連結及びパラメータ連携の仕様が追加されたようです。

今後はプロトコルの対応範囲の拡充等が想定されているようです。なお、Arazzo Specificationの詳細はこちらのOpen API Initiativeの公式ページからご確認いただけます。

まとめ
今回、apidays Indiaに参加してみて、とても実践的なセッションが多かったという印象を持ちました。
それはベンガルールという土地柄からも、参加者の多くが実際にソフトウェアを開発している、もしくはその開発をマネージしている方々が大半という背景もあるかと思いますが、実際のセッションとしてもいわゆるプロジェクトの事例紹介はあまり多くなく、大半は自社がオープンソースとして公開しているソリューションの背景・目的とそのソリューションの紹介という構成が多かったと感じます。
イベントの中ではインドの起業家によるパネルディスカッションが行われ、そこにはSpecmaticのNaresh Jain氏の他、PostmanのCo-FounderであるAbhijit Kane氏、Postmanと同様APIクライアントをオープンソースで提供するBrunoのFounder兼CTOのAnoop M D氏、API・UI・AIテストの統合自動化を提供するKarate LabsのCo-Founder兼CTOのPeter Thomas氏等、インドを代表する起業家の過去の体験談に関する議論はとても興味深かったです。互いに切磋琢磨して、刺激しあいながら成長していくその場の雰囲気が一聴講者の私にも十分に感じられました。
また、Key Noteではエージェント活用の時代においてAPIのあり方はどのように変わりつつあるかという中長期的な視点からの発表から、Agent Experience、APIのDiscoverabilityの他、AgentといったProbablisticな仕組みからいかにDeterministicな仕組みにつなげていくか、その品質保証にもつながるトピックのソリューションが紹介されるケースが多く、課題 -> ソリューションという流れが明確であり、色々と多くの学びを得られました。
同時に各ソリューションもSpecを重視したアプローチが取られており、イベントにOpen API Initiativeのメンバーが入られてはTrackを設けられていたことがとても良かったと感じます。実際、Agent Experienceの議論からArazzo Specificationの議論へのつながりもまた、とてもスムーズであり、納得感をもって多くの学びを得られました。(なお、私はOpen API Trackを中心に参加しましたが、並行して、GraphQL等他のTrackも議論されていました)
なお、本イベントのオーガナイザーであり Specmatic の Founder & CEO である Naresh Jain氏には、別途お時間をいただき、インタビューをさせていただきました。インタビューおよび、Specmaticの技術ブログについては、また別途公開予定です。
apidays Indiaへの参加のみならず、イベント会場への道中においても、多くの新鮮な発見を得られ、実り豊かなインド訪問となりました。今回のBlog執筆にご協力いただいたNaresh Jain氏の他、インドでお会いした皆様、ありがとうございました!

こちらの画像は今回のイベントテーマであるAIエージェントによる作成成果物ではありません。念のため。